押入れを整理していたら「ことばの花束―岩波文庫の名句365」という文庫本が出てきた。
岩波文庫から選ばれた、三冊ある名言集シリーズの最初の一冊である。
適当にパラパラ読んでも最初から読んでも同じ密度で、どのページも言葉が濃い。
そもそも「岩波文庫に入っている」というだけで厳しい予選を突破している訳だから当然ともいえる。
という訳で今回はその「ことばの花束」から選ぶベスト3!
まずは第三位!
鳥の歌声がいつも同じ調子にしか聞こえてこないというのは、無頓着な人間の粗雑な耳だけのことです。
無頓着な人間で粗雑な耳で、どうもすいません。
と拗ねたくなってしまうが、この手の辛辣系の言葉の中ではまだ大人しい方の言葉である。
続いて、
第二位!
子供は苦労をやわらげる。しかし不幸を一段と辛いものにする。
子供は人生の煩いを増す。しかし、死の思いを和らげる。
どっちなんだ。
落ち着きのない一人ツッコミのような感じである。
さあ、
いよいよ、
第一位は!!
「あたしたち、今夜ね――なんだと思う?――あたしたち、こんやね。あたたかいジャガイモがたべられるのよ!」
そして女の子の顔は幸福に光りかがやきました。
ろうそくがその顔をまともに照らしました。
この場面を、あえて他の名言と並べるというセンス。
一体どこのどんな人がこの場面を選んだのか、反対する人はいなかったのか、その辺が気になる。
ちなみに「アンデルセン童話集」の「ろうそく」という作品の一場面である。
それはともかく……、
急にどうしてもジャガイモを食べたくなる、この気持ちのやり場をどうしてくれるのか……。